ATLASプロジェクト国際シンポジウム2022(タイ・バンコク)
アジアにおけるネットワーク構築事業が本格始動!
Topics
- アジア連携推進タイ事務所(Asian Partnerships Office)が設置されたタイ・バンコクでATLAS国際シンポジウムが開催され、現地KOLとFace to Faceのネットワーク構築が実現しました。
- 当シンポジウムは日本の国立がん研究センター中央病院(NCC)と医薬品医療機器総合機構(PMDA)がホストを務めました。
- オンサイト、オンラインのハイブリッドで20か国から約300名の医療関係者が参加しました。
概要
国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:中釜 斉、東京都中央区)中央病院(病院長:島田 和明)は、アジアがん臨床試験ネットワーク構築に関する事業(Asian Clinical Trials Network for Cancers project: ALTAS project)の一環として、このたびタイ・バンコクにおいて「ATLAS International Symposium」を開催致しました。
シンポジウム会場(Okura Prestige Bangkok)
APO所長の寺田参省が司会
当シンポジウムはバンコクに主会場を設置して、オンライン中継とのハイブリッドで開催されました。国立がん研究センター中央病院から現地に派遣された研究者と各国研究者が一堂に会することで、Face to Faceの関係を構築することを目的と致しました。また、開催にあたり、当プロジェクト開始後に設立されたアジア連携推進タイ事務所(Asian Partnerships Office: APO)が重要な役割を担いました。
当日はCOVID-19の影響から、全ての演者および参加者が現地会場に参加することは叶いませんでした。しかし、タイ、ベトナム、そして日本から参加した研究者間で活発なディスカッションが行われ、オンサイトならではの、フランクな会話を含んだ交流が実現できたと思います。
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さらにシンポジウムの中では日本の医薬品医療機器総合機構(PMDA)の藤原康弘理事長が座長を務めるパネルディスカッションも開催され、アジア各国の規制当局の知見が共有されました。
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今回のシンポジウムにはオンライン参加も含め20か国から約300名の参加登録を頂きました。多地域かつ多様性に富んだシンポジウムとなり、今後ATLASプロジェクトのアジア広範囲への広がりを予見させる内容となりました。
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背景
ATLASプロジェクトは2020年9月に世界の早期薬剤治療開発をアジアでリードするために設立された国際共同試験ネットワークです。アジア地域で、すでに国際共同試験を豊富に実施している国々に加え、今後積極的に治験・臨床試験を推進しようとしている、マレーシア、タイ、フィリピン、インドネシア、およびベトナムなどと共に、がんの早期薬剤開発の発展を目指していきます。
こうした取り組みを継続的に実施するためには、参加国間の綿密な連携が欠かせません。そのため、国立がん研究センター中央病院国際開発部門では、タイのバンコクにアジア連携推進タイ事務所(Asian Partnerships Office: APO)を設立し、各国との連携を深める取り組みを致します。今回のATLAS International Symposiumはその幕開けのイベントとしてAPO主導で行われたのです。
本シンポジウムでは日本国参議院議員の武見敬三氏、在タイ日本国大使の梨田和也氏、およびタイ保健省副長官(Deputy Director General, Department of Medical Service, Thai MOPH)のNutthapong Wongwiwat氏からご挨拶を頂き、その後ATLASに関係する多くのステークホルダーが講演をいたしました。
講演される武見敬三議員
在タイ日本大使館、梨田和也大使
シンポジウムを通して、これまでオンライン会議のみのコミュニケーションを余儀なくされてきたパートナーとの関係を、さらに一歩深めることができたと自負しております。また、実際に現地に足を運ぶことで、急速に発展しているタイの現状を把握することにもつながりました。
感染症に十分配慮した中でこのようなシンポジウムを開催できましたこと、関係の皆様に心から感謝申し上げます。
シンポジウムの内容
シンポジウムは添付の資料にあるように、オープニングセッションと5つのセッションによる計6セッションで構成されました。
オープニングセッション
オープニングセッションでは前述の各国要人の挨拶に加え、国立が研究センター理事長の中釜斉より挨拶を致しました。その後、ATLASプロジェクトリーダーの中村健一(国立がん研究センター中央病院国際開発部門長)により当プロジェクトの概要、松田智大(国立がん研究センター中央病院国際開発部門アジア連携推進室長)よりアジア連携推進事務局の役割について発表いたしました。
理事長・中釜斉
ATLASプロジェクトリーダー、中村健一
アジア連携推進室長・松田智大
セッション1
セッション1ではテーマを「From Academia point of view」と題し、ATLASプロジェクト内で実施されているMASTER KEY Asia (大熊ひとみ;国立がん研究センター中央病院国際開発部門研究企画室長)、A-TRAIN study (須藤一起;国立がん研究センター中央病院国際開発部門TR推進室長)の概要について発表されました。さらに招待国の医師より「How to build up the network and expectations for ATLAS project」のテーマでそれぞれの研究環境に関する講演をいただきました。
各国招待演者
- Dr. Akhmal Yusof (マレーシア:Clinical Research Malaysia)
- Dr. Marcelo Imasa (フィリピン:St. Luke's Medical Center)
- Dr. Ekaphop Sirachainan (タイ:Thai society of Clinical Oncology)
- Dr. Pham Tuan Anh (ベトナム:National Cancer Hospital, Vietnam)
- Dr. Elys Dariatmo Herik (インドネシア:Dharmais National Cancer Hospital)
MASTER KEY Asiaについて講演する医師(大熊ひとみ)
A-TRAINについて講演する医師(須藤一起)
ベトナムから講演(Dr. Pham Tuan Anh)
TSCOよりEkaphop先生の講演
セッション2
セッション2はPMDAセッションとし「From Regulatory point of view」のテーマで行われました。
冒頭、座長の藤原康弘先生(PMDA理事長)よりご講演頂いた後、招待国の規制当局の先生方を交えたディスカッションが展開されました。
各国招待演者
- Dr. Suchart Chongprasert (タイ:Thai FDA)
- Mrs. Siti Asfijah Abdoellah (インドネシア:Indonesia FDA)
- Dr. Zaril Harza Zakaria (マレーシア:NPRA)
セッション3
セッション3はClinical Research Malaysia (CRM) セッションとし、「How can we drive Phase1 trials in Asia?」のテーマのもとディスカッションが行われました。
冒頭に座長兼演者である山本昇(国立がん研究センター中央病院副院長)より「Current status of ASIA One」を題した発表があり、その後、招待国の医師より各国のPhase1試験に関する取り組みについて講演頂きました。その後、CRMのDr. Akhmalおよび山本の座長で総合討論が行われました。
各国招待演者
- Dr. Voon Pei Jye (マレーシア:Sarawak General Hospital, Malaysia)
- Dr. Kulkanya Chokephaibulkit (タイ:Siriraj Institute of Clinical Research)

セッション4
セッション4は国立がん研究センター研究所が担当するセッションとなりました。座長の米盛勧(国立がん研究センター中央病院腫瘍内科長)により「Challenge of NCC」のテーマのもと、国内より2名の研究者が発表しました。
柴田龍弘(国立がん研究センター研究所がんゲノミクス分野長)からは「Collaborative researches in Asia by NCC Research institute」が、井上真奈美(国立がん研究センター研究所予防研究部長)からは「International Research Collaboration for cancer prevention in Asia」が発表されました。
国立がん研究センター、柴田龍弘の講演
国立がん研究センター、井上真奈美の講演
セッション5
最終となるセッション5はTSCOセッションとし、タイ臨床腫瘍学会のDr. Ekaphopと間野博行(国立がん研究センター研究所長)が座長となり進行いたしました。
冒頭に座長兼演者の間野より「National platform of cancer genomic medicine in Japan」をテーマにC-CATの取り組みを中心に我が国のゲノム研究の現状を発表しました。その後、下井辰徳(国立がん研究センター中央病院国際開発部門国際診療室長)より「Establishment of infrastructure for genomic medicine」が、Dr. Virote Sriuranpong (タイ:Chulalongkorn University)より「Genomic medicine in Thailand」が発表され、その後両座長の進行で総合討論となりました。
各国招待演者
- Dr. Virote Sriuranpong (タイ:Chulalongkorn University)
Session5の座長、間野センター長とEkaphop先生
国際診療について講演する医師(下井辰徳)
クロージングセッション
クロージングセッションは国立がん研究センター中央病院院長の島田和明が担当いたしました。今後のATLASプロジェクトのさらなる発展を祈念し、初回となるATLASシンポジウムを締めくくりました。
展望
今回、ATLASプロジェクトとしては初となる国際シンポジウムを開催し、多くの関連各国と親密な関係を構築する糸口がつかめました。ATLASプロジェクトはアジア各国が協力し、アジアのがん医療の課題解決を目指すプロジェクトです。このネットワークを維持、発展させ国内外にその恩恵が届くよう尽力して参る所存です。