胃癌に対するダビンチSPを用いた新しい低侵襲手術「MILLAR」
吉川 貴己
胃癌に対する手術では、根治性、機能温存、低侵襲性が重要です。根治性の点では、開腹でも腹腔鏡のアプローチも同等であることが証明されています。同じ根治性を有するなら、胃の機能をできるだけ温存できたほうが術後のQOLが良好となります。逆流防止機能をつけた噴門側胃切除後のmSOFY再建では良好な成績が得られています。体への侵襲という点では、傷が小さい/少ない、出血が少ない、合併症が少ない、時間が短い手術が求められます。傷や少ない出血という点で、開腹よりも腹腔鏡は優れています。腹腔鏡下のアプローチには、鉗子やカメラを直接扱う従来の腹腔鏡手術と、ロボットアームに鉗子やカメラを取り付けてロボットを操作するロボット手術があります。ロボット手術では、さらに合併症が減少すると期待されています。しかしながら、これまで、従来の腹腔鏡手術やロボット手術は、開腹手術に比べて、時間がかかっていました。近年、開発されたロボット、ダビンチSPは、1つのアームにスコープと3つの鉗子を取り付けることができます。われわれは、このダビンチSPを用いて、その特徴を生かし、腹腔鏡とロボットを同時に使う術式MILLAR (minimally invasive surgery using laparoscopy and a robot)を開発しました。MILLARを使った胃癌手術では、従来の腹腔鏡手術やロボット手術よりも、傷が少なく短時間で、良好な成績をあげています。