眼腫瘍科
診療について
当院の眼腫瘍科は、特に眼内腫瘍の治療に力を入れてきました。治療とともに、セカンドオピニオンにも積極的に応じており、原発性眼内腫瘍である網膜芽細胞腫(小児)とぶどう膜悪性黒色腫(成人)に関しては、全国の患者さんの半数以上の方が当院を受診されています。網膜芽細胞腫では放射線照射・全身化学療法・小線源治療に加え、眼動脈注入療法(注)・硝子体注入療法などの独自の治療法を臨床導入してきました。ぶどう膜悪性黒色腫では、放射線照射・小線源治療・眼球摘出などを、患者さんのご病状に合わせて適宜選択しています。
結膜・眼瞼・眼窩腫瘍では手術治療が原則ですが、放射線治療も積極的に行ってきました。特に眼瞼腫瘍は一般に放射線感受性が低いといわれますが、ほとんどのタイプで一定の局所制御が得られることがわかってきました。
眼付属器は、低悪性度の悪性リンパ腫が生じやすい組織です。血液腫瘍科の協力のもと、全身検査を行うとともに細胞学的な診断方法を取り入れ、放射線を主体とした治療を行ってきました。一方、無治療で慎重な経過観察を行っても進行しない場合があり、患者さんと十分にご相談のうえで治療方針を決めています。
現在、常勤医2名、非常勤医1名で診療を行っています。年間の手術件数は約350件で、そのほとんどが悪性腫瘍であり、通常の眼科手術は行っておりません。外来は、新患の方が毎年150人ほどで、その割合は眼内腫瘍が40%、眼瞼・眼窩・結膜腫瘍がそれぞれ15%程度です。
網膜芽細胞腫の子供をもつ親の会である「すくすく」は、当院を活動拠点にしています。年1回の勉強会などに全面的に協力しています。また、診療に関しての意見などをいただき、積極的に改善に努めています。
網膜芽細胞腫に対するメルファランの選択的眼動脈注入は、当院で開発された治療法で、国内では当院だけで行われています。2021年末の時点で710例877眼にのべ3,465回施行されています。重篤な合併症として脳血管障害が2例、気管支攣縮が2例、強い血管攣縮が2例、術後眼窩炎症が3例、術後一過性尿崩症が1例生じています。眼球温存治療は種々の方法を組み合わせて治療を行いますが、選択的眼動脈注入を含む治療を行った場合の眼球温存率は62%(552/877眼)です。